有酸素性運動に対する短期的応答
心臓血管系の応答
有酸素性運動中の心臓血管系の主な機能は
酸素やその他の栄養素を働いている筋へ運搬し、代謝産物や老廃物を運び去ること
心拍出量
1分間当たりに心臓から送り出される血液の総量
1回の収縮により送り出される血液量(1回拍出量)と心拍数によって決まる
最大運動では安静時(約5L/分)の約4倍の20〜22L/分まで増加する
1回拍出量
- 血液充満時(拡張期)の終わりに左心室が送り出すことができる血液の量(拡張期容量)
- 副交感神経系のホルモンのエピネフリン、ノルエピネフリン
この2つによって調整される
運動開始時、または運動開始を予想するだけでも交感神経の刺激によって心筋の収縮性が高まり、1回拍出量が増加する
酸素摂取量
体内の組織で消費される酸素量のこと
最大酸素摂取量
全身の細胞レベルで利用することができる酸素量の最大値
心肺系体力の指標として最も広く使われている
安静時の酸素摂取量は体重1kg当たり、1分間当たり35ml/kg/分と推定されていて、これが1代謝当量(1MET)と定義されている
健康な人の最大酸素摂取量は通常25~80ml/kg/分または7.1~22.9MET
収縮期血圧
寝室収縮時(収縮期)に勢いよく送り出される血液が動脈壁に加える圧力を推定したもの
心拍数と組み合わせて心臓の酸素消費量(仕事量)を示すのに使われる
拡張期血圧
血液が押し出されていない時(拡張期)に動脈壁に加わる圧力を示す
有酸素性運動中は血管が拡張するため低下する
平均動脈圧
心周期を通しての平均血圧のこと
局所循環の調整
安静時…心臓から送り出される血液の15〜20%が骨格筋へと送られる
激しい運動中…心拍出量の最大90%の血液が骨格筋に送られることもある
呼吸器系の応答
有酸素性運動中は肺胞内のガス濃度を適切なレベルに維持するため
- 組織に送られる酸素
- 肺に送り返される二酸化炭素
- 分時換気量(1分間当たりに呼吸される空気の量)
が大幅に増加する
健康な若い成人の呼吸数
- 安静時は12〜15回/分
- 強度の高い運動中は35〜45回/分まで上昇する
1回換気量(1回の呼吸で吸い込まれ吐き出される空気の量)
- 安静時は0.4〜1L
- 運動中は3L以上に増加
その結果、分時換気量は安静時の15〜25倍の90〜150L/分に増加する
解剖学的死腔
肺胞までいかない空気
若年成人で通常平均150ml
加齢とともに増加する
1回換気量を増加させること(より深い呼吸)は呼吸の頻度のみを増やすよりも効率がいい!
生理学的死腔
血流や換気が少ない、肺胞表面に問題があるなどの理由で肺胞の一部でガス交換ができない場合のこと
健康な人はほぼ全て機能してるので無視できる
ただしある種の肺疾患では肺胞の機能が著しく低下し、解剖学的死腔の10倍の容積に達することがある
ガス応答
拡散
酸素と二酸化炭素が細胞膜を超えて移動すること
濃度の高い側から低い側へのガス移動によって起こる
血液によるガス代謝副産物の輸送
酸素は
- 血漿中に溶けた状態
- またはヘモグロビンに結合した状態
で血液中を輸送される
液体に溶けにくいので血漿1Lに3ml程度しかない
大部分はヘモグロビンによって運ばれる
100mlの血液中に男性で約15〜16g、女性で約14g
1gのヘモグロビンで1.34mlの酸素を運べる
なので血液100mlで男性は約20ml、女性はそれより少し少なめの酸素が運ばれる
有酸素性運動に対する長期的な適応
心臓血管系の適応
心臓血管系で起こる変化
- 心拍出量の最大値の向上
- 1回拍出量の増加
- 安静時最大下運動時の心拍数の減少など
- 毛細血管密度の上昇による酸素の運搬、二酸化炭素の除去能力の向上
40〜60拍/分の徐脈(心拍数が低い)は高度にトレーニングされた持久系競技者にみられる
筋の適応
長期間の有酸素性トレーニングでは解糖系酵素の濃度が減少し、タイプⅡ繊維の筋量減少が起こる可能性がある
タイプⅠ繊維は選択的な肥大が起こる
ミオグロビン
細胞内において酸素を運搬するタンパク質
ミトコンドリア
グリコーゲンや遊離脂肪酸を酸化してATPを有酸素的に生産する細胞小器官
- ミトコンドリアの増加と肥大
- ミオグロビンの濃度の上昇
によりミトコンドリアに運搬される酸素の量が増加して
筋組織が酸素を抽出および利用する能力が向上する
骨と結合組織の適応
高強度インターバルトレーニングは
有酸素性運動としての効果をもたらしながら、より大きな骨形成の刺激を与えることもできる方法
成人の腱や靭帯などの成長と強度の増加の程度は
運動刺激に比例し、日常生活で生じる結合組織の歪みや緊張を繰り返し超える運動強度が必要
内分泌系の適応
運動強度が極めて高く、持続時間が短い(5〜10秒)場合には、
抹消血液中のホルモン濃度の変化としては、闘争−避難反応(エピネフリン、ノルエピネフリン濃度の上昇)しか起こらない
いったんここで区切って続きは次回にします!